伊調パワハラ問題の背景 東京五輪で激化する教え子争奪戦

リオ五輪ではすでに師弟関係は破たん（右の田南部コーチはアテネで銅メダルを獲得）／（Ｃ）共同通信社

　連日マスコミを賑わせている女子レスリングのパワハラ騒動。レスリング関係者が内閣府の公益認定等委員会に出した告発状に対し、日本レスリング協会と同協会の栄和人強化本部長（５７）は１日、いずれも内容を否定。週明けにもレスリング協会が伊調と栄氏から聞き取り調査を行うことになった。

　女子レスリング五輪４連覇の伊調馨（３３）は北京五輪後、至学館大（愛知）を練習拠点とする栄氏の元を離れ、都内へ転居。男子フリースタイルの田南部力コーチ（４２）に頭を下げ、男子合宿や警視庁の練習場で指導を受けるようになった。

　以後、栄氏は伊調が練習ができないように邪魔したり、田南部コーチには伊調の指導をやめるようきつく命じ、その嫌がらせはどんどんエスカレートしていったという。

　しかし、伊調は栄氏の圧力に屈せず、１２年ロンドン、１６年リオ五輪でも金メダルを獲得。日本の女子レスリング界を育ててきた栄氏からすれば、かつての教え子が、男子代表コーチの指導で五輪の連覇記録を伸ばしたことは、自分の指導力を否定されたに等しい。さらに、国民栄誉賞を受賞させたという「実績」まで横取りされた格好となり、腸が煮えくり返ったのかもしれない。