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山田隆道作家

1976年、大阪生まれ。早大卒。「虎がにじんだ夕暮れ」などの小説を執筆する他、プロ野球ファンが高じて「粘着!プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。各種スポーツ番組のコメンテーターとしても活躍中。

阪神に時間がなくて良かった 矢野監督就任はベストな選択

公開日: 更新日:

■普通の判断が難しい球団が阪神

 そう考えると、今回の矢野監督はほぼ一択の状態から誕生したように思う。ポスト金本監督というと、これまでは矢野監督の他に掛布雅之岡田彰布といった大物OBの名前もマスコミを通じて噂されていたが、これだけ時間がない中では、掛布や岡田といった完全な別路線をトップに据えてゼロから組閣するのは極めて難しい。それこそ阪神お家騒動が激化する、あるいは長期化する可能性があり、それを回避するためには最低限の変更でとどめられる内部昇格が適している。「金本野球の継承」といえば聞こえはいいが、実質的には矢野監督による継承路線しか手はなかったのだろう。

 しかし、個人的にはこの緊急性がかえって良かったと思っている。ご存じ、現役時代の矢野監督は中日から阪神に移籍して成功をおさめ、2度の阪神優勝に貢献した正捕手だった。さらに引退後は評論家として野球を学び、日本代表のコーチも務め、阪神の一軍コーチや二軍監督といった指導者経験も積んできた。つまり、矢野監督は「捕手出身、優勝経験、評論家経験、指導者経験、国際試合経験、他球団経験」といった監督になるにふさわしい条件をすべて兼ね備えているのだ。

 だから、普通に考えれば矢野監督はベストな選択なのだろう。緊急だったからこそ、球団は普通の判断でまっとうな人物を選んだ。魑魅魍魎が渦巻く阪神においてはこの普通が難しいだけに、今回は時間がなくて良かったのかもしれない。

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