大船渡・佐々木に“163kmのリスク” TJ手術の権威が警鐘

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体のピークは24~25歳

 ――佐々木の育成方針は野球界のモデルケースになるでしょうか。

「なるでしょうね。高校時代にあまり投げてなくてもプロでやれるんだという。ただ、大谷翔平選手のように160キロ以上を投げる投手の多くはトミー・ジョン手術を受けている。かつ大谷選手はメジャーで肘を壊しました。根底にはいつ肘を痛めるかどうかはわからないということがある。100人が同じ練習時間、球数、投球強度でやっても同時に痛めるわけではない。個人差、体格差、投げ方の差が出るだけで、永遠に投げ続けたらいつかは壊れる。どこかで休まないといけない。本人の状態を優先し、疲労が出たらやめておこうという方がいいと思う。疲労を感じるということは筋肉が悲鳴を上げ、防御反応が働いているわけで、これ以上投げると痛めるよというサインです。これはプロの選手にも言えることです」

 ――野球界には投げ込みでつくる考え方もある。

「たくさん投げて力が抜けた時のフォームがいいという指導者がいますが、非常に危険です。佐々木選手を含め、選手にとって誰しも自分の肘は宝物。何億円ものお金を稼ぐかもしれないのですから」

 ――プロ入り直後から大活躍するのは難しいかもしれませんね。

「プロに入ってすぐにガンガンやる必要はないと思う。肉体的、技術的なピークは24~25歳といわれている。米国ではアマ時代に勝ち負けを基準に酷使していない。10歳で野球を始めたとして、プロ入り後もマイナーを経て、15年間でピークに持っていこうとしているのに対し、日本は小学生の頃から勝つためにやっている。高校では甲子園があり、半分の7年間ほどでピークに持っていこうとしている。私は、小さい頃から頑張り過ぎて、潰れてしまった子供たちを何人も診てきました」 =つづく

 ※次回は医療現場から見た野球障害の実態、育成のあるべき姿について聞きます。

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