スカウト部長は佐々木絶賛も…巨人ドラ1逡巡に原監督の影
全日本大学野球選手権の2日目が行われた11日、東京ドームにプロのスカウトが集結した。ネット裏で今秋のドラフト上位候補のひとりである東海大の捕手・海野を視察した巨人の長谷川国利スカウト部長(57)は日刊ゲンダイの取材に応じ、「捕ってから速いし肩も強い。上位候補でしょう」と話した。
巨人は先月10日のスカウト会議で最速163キロ右腕の大船渡・佐々木朗希(3年)ら、今秋ドラフト1位候補約10選手をリストアップ。同部長は「順位付けはまだしていません。これから夏の大会(高校生)、都市対抗(社会人)、秋のリーグ戦(大学生)がありますから、それまでは決められません」と言う。
■「智之の高校時代と雲泥の差」
複数球団の1位競合が確実な佐々木については「ポテンシャルの高さはダントツ。何がいいって全部です。球は速いし、変化球もいい。身長も高い(190センチ)しね。投げるだけじゃなくて、足も速い。50メートルを5秒台で走る身体能力の高さ。評価していない人はいないでしょう。いずれは菅野のようなエースに? いやいや、智之の高校時代(東海大相模)と比べたら雲泥の差。10対1ですよ。次元が違います」。
同じく1位候補の星稜・奥川恭伸(3年)が今春のセンバツ1回戦で好投した際、長谷川部長は「今一軍で投げても5つくらい勝つんじゃないか。高校野球の大会に1人だけプロが交じっている感じ。28年間スカウトをやっているが、何本かの指に入る」と絶賛していた。同じ高校生でも奥川の方がより即戦力に近いという声もある。が、同部長はこう続けた。
「奥川もいい投手ですよ。でも佐々木はそういう次元じゃない。甲子園春夏連覇の松坂(現中日)と比べて? 松坂や田中(現ヤンキース)は高校時代からスタミナがあったけど、それを除けば、その2人より上。佐々木は体力的なこともあるから、体をつくる期間は必要です。1年目からローテーションで、という投手ではないけど、ここ何十年で一番の素材です」
近年の巨人は2017年に清宮(早実→現日本ハム)、翌18年には根尾(大阪桐蔭→現中日)を1巡目で入札した。実力に加え、人気、知名度も重視し、1位は甲子園のスター選手を指名する傾向がある。佐々木はこれまで甲子園経験はないが、人気や知名度はすでに全国区。試合で投げるたびにスポーツニュースだけでなく、ワイドショーなどにも取り上げられている。この夏の地方大会は佐々木一色になりそうだし、仮に最後の夏に甲子園出場を逃したとしても、話題性が薄れることはない。まして、「ここ何十年で一番」だとすれば、育て方次第では将来のチームを背負っていく逸材である。
スカウト部門の責任者がこれだけ佐々木を絶賛しても、まだ1位に決められない理由は、これから「夏の大会、都市対抗、秋のリーグ戦がある」ということだけか。昨オフに3度目の就任を果たし、今回は編成面などの“全権”を握る原辰徳監督(60)の存在も関係しているのではないか。
「就任早々の昨年も、吉田輝星(現日本ハム)で決まりかけていたドラフト1位が原監督の意向で根尾に変更になった。今年のドラフト1位も指揮官の意向が強く反映されそうです」(チーム関係者)