高卒選手を数年で主力にという旧来の育成価値観も通用せず
「今の移籍サイクルの速さに対応するのは本当に大変。『鹿島のDNAに合った移籍組』を探して補強している」と鈴木部長は説明する。とはいえ、上田も入団会見で「できるだけ早く海外へ行きたい」と公言し、相馬も同様の発言をしている。東京五輪後の欧州行きを念頭に置いているようで、1年以内にいなくなる可能性が高い。
「我々ができるのはしっかりと移籍金を取り、次の戦力を確保し、さらなる若手を育成すること。それしかない」と前出の鈴木氏は強調する。
10年夏にセレッソ大阪から移籍金ゼロでドルトムントへ移籍した香川真司の例に象徴されるが、かつてのJクラブは「選手の飛躍のためなら金に関係なく送り出してやろう」という親心を示すケースが多かった。が、これだけ若年層の海外移籍が増えてくるとそんな余裕は持てない。「移籍金をしっかり取って先々のクラブ運営に生かすべき」という考えになるのも当然だろう。
7月下旬にポルトガルのマリティモにコパ・アメリカ日本代表FW前田大然を送り出した松本山雅にしても、1年後のレンタル期間終了時に相手方が「買い取りたい」と言ってきた場合、0円移籍にならないような対応策を講じているという。「選手の売買はビジネス」という欧州では当たり前の価値観が、Jクラブにも根付き始めたのはいいこと。そうしなければ、日本の若く輝ける才能が根こそぎ青田買いされる恐れもある。Jクラブは、今まで以上の危機感を持つべきだ。