「Jや代表で実績」の前提崩れ…変化した海外移籍の価値観
「できるだけ早い段階で海外へ行きたい」。そう断言する20歳前後の若手が後を絶たない。法政大サッカー部を退部して7月末に鹿島入りした上田綺世を筆頭に6~7月のコパ・アメリカ(ブラジル)参戦組の大半からそういうコメントを耳にした。「久保建英がレアル・マドリード、安部裕葵がバルセロナに行って『キャプテン翼』で描かれていた世界が現実になった。彼らの海外志向が強まるのも理解できる」と欧州10年目の川島永嗣(ストラスブール)もしみじみと語る。選手側の価値観が「Jリーグでの成功」「代表入り」を超えて「海外行き」に変化しているのは間違いない。
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2000年代までは「海外へ行きたいならJやA代表で実績を残すことが大前提」という考え方が一般的だった。中村俊輔や松井大輔(ともに横浜FC)はその代表格。08年1月にVVVフェンロに移籍した本田圭佑にしても、オシムジャパン時代の07年に招集歴があった。「日本代表になって初めて海外に出られる」という意識が根強かったのだ。
しかし、10年代になると移籍の低年齢化が一気に進む。FIFA代理人制度が変わった15年あたりからは、奥川雅也(ザルツブルク)のようにプロ1年目で青田買いされる者が出始め、17年にはA代表招集歴のない鎌田大地(フランクフルト)、18年には知名度の低い西村拓真(CSKA)らが続々と外に出た。今夏は、現時点で12人がJから欧州へ行ったが、A代表未経験の小池龍太(ロケレン)や菅原由勢(AZ)、中村敬斗(トゥエンテ)、食野亮太郎(マンチェスターC)も海を渡った。欧州で傑出した実績を残しながら「30代」という年齢が響いてスペイン2部行きを強いられた岡崎慎司(マラガ)や香川真司(サラゴサ)がうらやむような状況で、本当に「誰もが欧州」という機運になっている。