著者のコラム一覧
松崎菊也戯作者

53年3月9日、大分県別府市生まれ。日大芸術学部放送学科卒業後は宇野重吉らが率いる「劇団民藝」に所属。その後はコントグループ「キモサベ社中」「キャラバン」を経て、88年にコントグループ「ニュースペーパー」を結成。リーダー兼脚本家として活躍した。98、99年にはTBSラジオ「松崎菊也のいかがなものか!」でパーソナリティーを務めた。現在も風刺エッセイや一人芝居を中心に活躍中。

力走ならぬ力歩 競歩の実況中継はどうにも間が抜けている

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 ……そういえば、今回は世界陸上独占中継民放某局、滑舌のよいベテランアナウンサーだったが、やっぱり、「金メダルへ最後の」でちょこっと間があって「歩きですッ」だったもんなあ。

 競歩の選手の力走、じゃねえ「リキホ」。ええい、入力したって変換しねえぞ。広辞苑にも「力歩」なんて単語は載ってねえもんなあ。鈴木雄介の「力歩」、気温30度を超える猛暑の中、50キロも歩かせられた気分を、あんた想像できますカ?

 オレは次のように想像する。

「おめでとうございます。よく、は(じゃねえ)、歩きましたね。達成感は?」

「ないです」

「途中、給水の時に立ち止まってしまって、一瞬棄権するんじゃないかと心配しました」

「内臓にきてたので、とにかく死にたくなかったので、止まって飲みました」

「スタートした46人中、なんとかゴールできたのは28人、完走(じゃねえ)完歩率60%でした」

「ゴ~モンです」

「歩きながら何と闘っていましたか?」

「ええいもうどうにでもなれって、走り出したい欲望と闘ってました」

「夜中のレースは異例でしたが?」

「夜中に歩き回るもんじゃないです」

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