【追悼】元日本代表・田口光久さんが妻と語ったサッカー愛
日刊ゲンダイで田口さんの連載コラムが隔週ペースで始まったのは、2015年4月9日発売号だった。
取材場所は自宅マンション近くの喫茶店が多かった。いつも妻の正子さんと横並びで定位置〈店の右側の壁際〉に座っていた。日本代表GKの妻なのに「コイツはサッカーに興味がない」と田口さんに言い切られ、それでも「そうです。好きじゃありません」。屈託のない正子さんに記者が「いいですか! 日本代表の主将だったんですよ! あの〈代表のキャプテンマークを巻いてチームを牽引していたイケメン長谷部〉と同じ立ち位置にいたんですよ! ダンナは!」と力説しても「へぇ~そうなんですねぇ……。でも全然ビジュアルが違いますから」とサラッと受け流されるのが常だった。
このやりとりをニコニコしながら聞いている田口さんに「日本サッカーの人気低迷期に代表を支えてきました。その原動力となったものは何でしょうか?」と聞くと「プライド」と即答だった。
「日本リーグで好パフォーマンスを見せて日本代表に選ばれ、日の丸を胸に死力を尽くす――というプライドが原動力となった。今みたいに億単位のサラリーをもらえるワケでもなく、日本国民から注目される存在でもない。オレは〈日本代表〉というプライドだけでサッカーをやっていた」