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鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

年俸削減案で対立 労使“タフネゴシエーター”たちの交渉術

公開日: 更新日:

 一方、2011年オフに中島裕之とヤンキースの入団交渉が決裂したのは、ヤンキース側が最初から譲歩できない最終条件を提示したことで、中島側に交渉の余地そのものがなかったためだ。

 また、選手会と経営者の双方が相手の譲歩を当てにして妥協せず、結果として未曽有のストライキとなったのが1994年の労使交渉だった。「交渉のプロ」が揃っているはずの選手会側も経営者側も、実は目分量を見誤って対応していることが珍しくないことが分かる。

 しかも、年俸が高額な選手ほど削減額が大きく、低年俸な選手の削減額を低く抑えるという機構側による一連の提案は、選手の分断につながりかねない。選手会側が一貫して「年俸の削減額は合意済み」として提案を拒否するのは、団結を維持して選手の「抜け駆け」を許さないことが不可欠になっているためだ。

■トランプは無関心

 何より、双方とも妥協点を見いだす余地が乏しくなっている中で、94年のストライキの際に失敗に終わったものの調停を試みたビル・クリントンと異なり、今回はトランプ自身が大リーグの動向に全く関心を払っていないため「大統領による仲裁」も期待しにくい。

 このように、労使ともに「タフネゴシエーター」が揃ったことが、かえって事態の紛糾を長引かせているのである。

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