陸上中長距離で注目の21歳 田中希実の素顔を母親が明かす

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 2日、陸上の日本選手権1500メートルで、2位に5秒41もの大差をつけて圧勝した豊田自動織機TCの田中希実(21・同志社大3年)。7月に3000メートル、8月に1500メートルの日本記録を立て続けに更新するなど、中長距離のスペシャリストとして注目されている。5000メートルはすでに東京五輪の参加標準記録を突破しており、12月の日本選手権で勝てば五輪出場が決まる。陸上界注目の21歳はどんな家庭で、どのように育ったのか。母の千洋さんに聞いた。

■「決めたことは最後まで」

 父・健智さんは実業団の3000メートル障害、千洋さんはマラソンの選手だった。別々の企業に勤めていた2人は、それぞれの上司に連れられて訪れたスナックで知り合い、親交が始まった。共にアスリートであることや、1学年差で同じ中学を卒業していたことが分かり、意気投合。結婚ののちに姉妹の長女として誕生したのが田中だ。千洋さんはこう語る。

「希実は決めたことを最後までやり抜く。ものすごくこだわりが強くて、『そこまでやらなくても……』と思うことが何度もあった。今もですが、小学生の頃から読書が好きで、早く本を読むためにと2・5キロの下校路を走って帰っていました。そこまで楽しみにしていた読書は、宿題が終わった後にすると本人が決めていた。勉強に関しても自分が理解するまで放り出すことがないので、時には『(課題が終わらなくて)読書ができない!』と、泣きながら問題文と向き合っていましたね」

 愛読書は「赤毛のアン」。小学6年から中学2年までの約2年間、同作品のパーツ付きドールハウスマガジンの週刊誌を定期購読。「決めたことは最後まで」の精神で全100冊を集め、毎号に付属される部品で、モデルとなった家を24分の1のスケールで完成させた。初志貫徹のエピソードはこれだけではない。

「小野市のお祭り(小野まつり)では、配られるうちわのデザインを市内の中学生全員から募ります。それも1年生の頃から頑張っていて、『下書きでそんなに細かくしたら色を塗るのが大変だよ』と心配になるほどでした。その甲斐あって、3年の時に希実の作品が選ばれたんです。ずっとこれを目標にしていたので……」

■笑ってしまうフォーム

 千洋さんは田中の出産前と後の計2回、北海道マラソンで優勝したほどの実力者だ。そんな環境が大きかったのか、田中は物心ついたころから走っていた。しかし、最初から優れた選手だったわけではない。

「小学生の頃に運動会を見に行くと、徒競走やリレーではいつもビリ。主人と『変な走り方だね』と笑ってしまうようなフォームでした(苦笑い)。ですが、短距離は遅くても、そのままの速度で走り続けることができたんです」

 小学生女子の陸上種目は長距離種目が800メートルまでしかなく、短距離の遅さは致命的だった。が、「やり始めたら最後までやり抜く」姿勢は徐々に実を結ぶようになる。中学生になるとスピードも備わり、1年時はジュニアオリンピックの800メートルで全国大会に出場。翌年の全日本中学陸上の1500メートルは4位、最終学年時は優勝した。

 中学卒業後は駅伝で全国大会に行きたいという思いから名門・西脇工業高の情報・繊維科へ進むと、目標通り3年間で3度、全国高校駅伝に出場。国体では1500メートル、3000メートルで優勝。さらにはアジア陸上選手権も経験した。

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