アテネ五輪予選で守りたかったプロの矜持と長嶋監督の経歴
これだけの選手が集まったのだから、絶対に負けるわけにはいかない。それが僕を含め、当時のナインに共通した思いでした。確かに韓国や台湾は、代表チームとなると実力以上の力を発揮します。後年、WBCで苦杯をなめさせられたことを覚えているファンも多いでしょう。それでも、国内リーグのレベルの差ははっきりしていました。もし、彼らに負けたら? もしかすると、韓国や台湾の野球の方がレベルが上なのでは? と思う人も出てくるかもしれない。
それは僕らが日本のプロ野球でやってきたことを全否定されるのと同じです。積み重ねた経験も実績も、何もかもが台無しになってしまう。僕は当時、ロッテの抑えとして3年連続30セーブをマークしていました。僕にとっては、そうした自分のステータスを守るための大会でもありました。おそらく、他の選手も似たような思いを抱えていたでしょう。
さらにこのメンバーで負けるようなことがあれば、長嶋監督に恥をかかせることにもなりかねません。ミスターの経歴に傷を付けるようなことだけは避けなければいけない。
翌年のアテネ五輪への出場権うんぬんよりも、自分たちのプライドを守ること、そして長嶋監督のため。2つの思いを抱えて臨んだアジア選手権決勝リーグは、スコア以上に胃がヒリヒリするような試合だったんです。 =つづく