アジア選手権完全制覇目前で長嶋監督が初めて笑顔を見せた
日本プロ野球の威信をかけて臨んだ2003年アジア野球選手権兼アテネ五輪予選。3勝0敗という結果とは裏腹に、体力と気力を信じられないほど消耗した大会でした。
■「1点取られたのが巨人のエースかよ」
初戦の中国には13―1で勝利。もともと野球が根付いていない国の代表チームということもあり、警戒するレベルではありませんでした。ちなみにこの1失点は大会通じて日本唯一の失点。先発の上原浩治が本塁打を打たれたものです。大会後に高橋由伸が「1点取られたのが巨人のエースかよ」とボソッとつぶやいたことで、周囲の選手も思わず笑ってしまいました。
とはいえ、試合中はそんな和やかなムードだったわけではありません。同じ日のデーゲームで、台湾が韓国に延長戦の末に逆転勝ち。野球は最後まで何が起きるかわからないということを改めて認識させられ、これは一瞬たりとも油断できないと、むしろ気が引き締まりました。
2戦目の台湾戦は9―0で勝ちましたが、ビッグイニングをつくれたわけではありません。初回は無得点。二回に1点、三回に2点、四回にも2点と、少しずつ加点していったものです。ベンチは息の詰まるような雰囲気で、9点取って勝ったという実感がなく、終わってみれば9点も取っていた、という印象でした。