小久保一軍ヘッドコーチ招聘にソフトバンクの強さを見た
以前から野球談議を交わす仲だったとはいえ、さすがに「侍ジャパンの投手コーチをお願いできませんか」と要請されたときは驚いた。
小久保ジャパン初の国際試合となった15年11月のプレミア12で3位に終わった小久保監督を励まそうと、福岡で森重隆現日本ラグビー協会会長と飲んでいる席に彼を呼んだ。その日も、私なりの投手継投の要諦などを好き勝手に話していたら、「実は……」と切り出された。会がお開きになったあと、2人で入ったラーメン屋でのことだった。
当時の私は、すでに78歳。体力にも頭にも自信があったとはいえ、日本代表の周囲には「なにもそんな年寄りに頼らなくても……」という意見が間違いなくあったろうと思う。しかし、彼はすべての責任を背負う覚悟を持った表情で「以前から考えていたことです。力を貸してください」。純粋な気持ちをぶつけられ、断る理由はなかった。
こういう覚悟があるかないか。決断できるかできないか。指導者の最も大切な資質につながると私は思っている。
ソフトバンクは4年連続で日本シリーズを制覇している最強軍団。チームとして絶頂期にいながらしかし、現状維持を良しとせず、有能な大物OBを入閣させてチームの新陳代謝を図る。小久保ヘッドコーチの招聘にソフトバンクの強さが表れている。