阪神の元スター今岡誠は「名脇役」2010年の日本一の支えに
「一回、選手みんなで食事にでも行こうか」
「はい、(後輩選手に)声をかけておきます」
2010年シーズン序盤、九州遠征時の熊本で、今岡真訪(誠=現ロッテヘッドコーチ)ら複数の選手たちと焼き肉を囲んだ。
私は監督時代、選手と会食する機会をつくり、コミュニケーションを図った。主力選手だけでなく、シーズン中は主に控え選手に声をかけた。今岡は忌憚ない意見をしてくれ、野球に真摯に向き合う選手だと感じた。
■テスト入団した阪神の元スター
阪神時代はスター選手だった今岡は、同年春のキャンプでテスト入団した。中にはマイナス面の評判も聞こえてきたけれど、そんな印象は全くなかった。新天地でもう一度、チャンスを掴もうという意気込みがヒシヒシと伝わってきた。正式に入団が決まった際に宿舎の部屋に呼び、「一緒にやろう。チームの力になってくれ」と声をかけた。
開幕一軍を勝ち取り、主に代打として起用した。調子が上がらず二軍で調整する期間が長かったが、二軍スタッフから「若手に交じり、腐ることなく練習に取り組んでいる」との報告を受けた。彼の経験や勝負強さ、不屈の精神が重要な局面で必要になると考え、公式戦終盤に一軍に呼んだ。勝てばクライマックスシリーズ進出が決まる最終戦で2安打を放ち、本塁へのヘッドスライディングでチームを鼓舞。大いに期待に応えてくれた。