著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

【開会式】新国立競技場の最寄り駅では五輪賛成派と反対派のバトルでカオス状態

公開日: 更新日:

開会式当夜の新国立競技場周辺

 派手な花火が打ち上がり、MISIAの君が代独唱に森山未来、真矢みきらのパフォーマンス、ゲーム音楽に合わせた入場行進、そしてテニス大坂なおみの最終点火と華やかな祭典ムードが漂った7月23日夜の開会式。

 しかし、直前の東京・国立競技場(新国立)の最寄り駅・JR千駄ヶ谷駅では五輪賛成派と反対派がバトルを繰り広げるなど「カオス状態」に陥っていた。

 日本オリンピックミュージアム前の五輪マーク付近も人・人・人だらけ。「少しでも雰囲気を味わいたい」という世界各国の人々やメディア関係者が集結して超密状態。なぜ無観客で行われているのか、その意味がよく分からなくなった。

 開会式が始まる午後8時の4時間前。千駄ヶ谷駅は大勢の人で埋め尽くされていた。

 東京体育館から新国立に抜ける道も車両通行止めになっており、歩道は野次馬でごった返していた。

 外苑西通りに出ると「TOKYO2020」の大看板が掲げられた新国立が一望できる。

 普段はミュージアム前が人気の撮影スポットなのだが、そちら側は関係者のセキュリティーチェック用のテントが立ち、金網が設置されているため、こちらの方が記念写真に適しているのだろう。実際、多くの人が盛んにスマホやカメラを向けていた。

ホープ軒やコンビニはこの夜ばかりは大盛況

 一番人気の場所は名物ラーメン店・ホープ軒から河出書房新社前を経由して仙寿院の交差点まで。当然、ホープ軒も大盛況だ。新国立に5万7597人が集まった2020年元日の天皇杯決勝・神戸ー鹿島戦の時の凄まじい行列に比べるとだいぶ落ち着いてはいたが、店としては久しぶりの特需だったのではないか。

 特需という意味では、新国立周辺のコンビニ・ファミリーマートもそう。同店では公式スポンサーに名を連ねるアシックスが開発した公式応援Tシャツを販売する特設コーナーを設置。2週間前は閑古鳥が鳴いていたが、新日本青年館の店では「昨日と一昨日では物凄く売れてます」と店員もほくほく顔。隣のジャパンスポーツオリンピックスクエアの公式ショップも人でごった返したという。

 無観客開催でも、新国立周辺だけは五輪効果が大きいようだ。

外国人の観客も相当な数

外国人観客もかなりの数

 オリンピックミュージアム前の人だかりは、新国立完成からの1年半では間違いなく最高レベル。観光客はもちろんのこと、テレビ中継を試みる各国メディア、スマホと小型カメラを使って実況中継するユーチューバーまでおり、コロナ禍ということを忘れそうになった。

「これじゃあ~コロナ感染、広がるよね」という声も聞こえてきたが、新国立に最も近い場所に折り畳み式のイスを持ち込み、飲食しながら開会式を外から眺めようという猛者もいた。

 誰もが、中に入れないなら入れないなりに知恵を絞るもの。「だったら最初から有観客にした方が良かったのではないか」という感想を抱いた人も少なくないだろう。

 日本語のみならず、中国語や英語、スペイン語などが飛び交い、外国人観客も相当数いた。

 1998年長野五輪の聖火モニュメント前にいた東京在住のフィリピン人女性に話を聞くと「チケットはもともとなかったけど、新国立をひと目見たくて。リスペクトすべきはアスリート。安全のために無観客は仕方ない」と言う。

 東京生活7年というインド人家族も「こんなに素晴らしい新国立を生で見られただけで幸せ。東京に住んでいて良かった。昼間のブルーインパルスも最高だった」と笑顔を見せていた。

反対派の「中止」の横断幕と賛成派の「感謝」の演説

 彼らとの会話から平和、友情、連帯感、フェアプレーという五輪精神をほんのわずかでも感じられたのは、この日の収穫だった。

「それなりに五輪開催にも意味があるのではないか」と少し前向きな気持ちで帰途に就こうとすると千駄ヶ谷駅に無数の警官隊の姿が。 

 予想以上の混沌ぶりに何事かと思いきや「東京五輪中止」の横断幕を持った反対派がズラリと並び、無言の抗議活動を行っていた。

 そこから少し離れた場所では「五輪開催は医療関係者や運営関係者、ボランティアのおかげ」と感謝の演説中。

 その目の前で「いい加減にしろ。感染拡大したら誰が責任を取るんだ」という怒号を浴びせる人もいた。

 日本は自由主義国家なので誰が何を言っても許されるが、東京五輪開会式当日にこのムードは、やはり複雑。すでに競技は始まっているが、国民の大半が納得できる東京五輪への道は遠そうだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末