原監督しかめっ面…巨人が生かしきれなかった石井琢朗コーチが移籍した途端DeNA快進撃
「今年はちょっと、ナメてかかれませんね」
とは、セ球団のスコアラー。オープン戦で首位に立つDeNAの戦いぶりを、
「昨年は優勝したヤクルトに20ゲーム差の最下位に沈んだ。チーム防御率は12球団で唯一の4点台となる4.15。投手陣再建が最大の課題であることに変わりはないが、脅威に感じるのは攻撃陣の方ですね。もともと打線は、昨年もチーム打率がリーグ2位の.258といいんですが、攻撃パターンが少なく、機動力もないから怖さはそれほど感じなかった。なにしろ昨季のチーム盗塁数は12球団ワーストの31でしたからね。それが、このオープン戦でチーム打率.307といよいよ打線の迫力が増しただけではなく、12球団トップの9盗塁と積極的に足を絡めてきてもいる。走者を進められたらイヤだなという場面でしっかり進塁打を打ったり、攻撃のバリエーションが明らかに増えた。たかがオープン戦、と侮れません」
と、言うのである。
就任2年目となる三浦大輔監督(48)の経験不足を補うため、1998年の日本一メンバーである石井琢朗野手総合コーチ(51)、鈴木尚典打撃コーチ(49)、斎藤隆チーフ投手コーチ(52)を招聘。気心の知れた実績抜群の3人が年下の監督を支える体制をつくったが、中でも大きいのが石井コーチの存在だ。
通算2432安打の石井コーチは、2012年に広島で引退後にそのまま内野守備走塁コーチに就任。打撃コーチになった16年には、前年に.246だったチーム打率を.272に大幅改善し、その年からの広島のリーグ連覇に大きく貢献した。18年に移籍したヤクルトでも打撃コーチとして約200得点の上積みに成功、前年最下位のチームを2位に押し上げた。独自のアプローチで個々のスキルアップを促しながら、「意味のある凡打を打とう」「打っても3割。7割の失敗をチームの勝利に生かそう」という意識改革とチーム打撃の徹底で成果を上げた。
巨人はオープン戦打率が12球団ワースト1割台
「そんな石井コーチが指導力を発揮し切れなかったのが、昨年まで在籍した巨人だった。20年に野手総合コーチとして招聘されたものの、昨年は10月になって突然、三軍コーチに配置転換。その時点ですでに石井コーチのDeNA入りが決まっていたための措置ではあったが、それ以前から22年限りでの退団がウワサされていた。今の巨人は原監督のトップダウン体制で、もの言う石井コーチと原監督の折り合いが悪くなっているともっぱらだったからね。チーム内には元木、阿部、桑田という次期監督候補のコーチが混在していて、外様の石井コーチが独自色を出しにくかったということもある。12年に就任した橋上戦略コーチ(現BCリーグ新潟監督)と同じような形だね。『見逃し三振はOK』と斬新な方針を打ち出して巨人打線を改革、3年ぶりの日本一と結果を出した橋上コーチは、打線が振るわなくなるや原監督に、『見逃し三振は決していいものではない。無抵抗ではバットを持つ必要がない』と方針を百八十度変えられ、3年で巨人を去った。石井コーチを巨人が使い切れなかった」(球界関係者)
石井コーチが退団した巨人はこのオープン戦のチーム打率が12球団ワーストの.171と貧打に喘いでいる。3割を超えるDeNAとは対照的。DeNAの快進撃を原監督は苦々しく見ているのではないか。