「雨に泣いてる」真山仁著
2011年3月11日、都内にいた毎朝新聞の記者・大嶽は、未曽有の災害が発生したことを直感する。駆け出し時代に体験した阪神・淡路大震災での失敗が心の傷として残っていて、現地での取材にこだわり、妻の反対を押し切って被災地へ向かう。
仙台支局にたどり着くと、現地のデスク中岡から、三陸市に取材に出たまま消息が分からない新人記者の真希子を捜すよう頼まれる。真希子は社主の孫だった。
翌朝、震災から2日後の沿岸部に足を踏み入れ、戦地のような現場の状況に息をのむ。情報を求め市役所に足を運んだ大嶽は、他紙の記者から真希子と行動を共にし、前日、遺体で発見された三陸通信局の広瀬が市長の汚職疑惑を取材中だったと耳にする。
自衛隊の船に強引に乗り込み、海路から真希子が滞在していた寺に足を運んだ大嶽は、真希子の無事を確認する。しかし、真希子を命がけで救った住職の心赦は遺体で見つかる。住職が握っていた位牌の名前に大嶽は見覚えがあった。やがて大嶽は、心赦が13年前の判事夫妻殺害事件の犯人ではないかと疑念を抱く。