名越康文氏(精神科医)
本の中には、その考えを裏付ける豊富なエピソードが盛り込まれていて、後半では、その思想的背景を江戸時代にまでさかのぼって掘り下げています。単なるハウツー本とは違って、読む人によって理論書にもなれば、本格的なビジネスの実践書、そして何より、社会の中で仕事をするとはどういう意味なのか、を明確に教えてくれる生きた哲学書になっています。
精神科医の立場からも、この本との出合いに感謝しています。というのも、心の問題の多くは、仕事をする中で抱えるストレスです。日本社会の構造をわかっていないと、心の問題の本質もまたわかりません。その点で僕は、経済番組で培った経験則の上に、この本から得た理論が加わり、一本のはっきりした筋道を得た思いです。
初刊は1979年と古いですが、今読んでも1ページたりとも古くない。線をいっぱい引きながら読みました。こういう本との出合いがあるから、読書はやめられませんね。
▽名越康文(精神科医) 1960年、奈良県生まれ。相愛大学、高野山大学客員教授。近畿大学医学部卒。大阪府立精神医療センターにて、精神科救急病棟を設立。コメンテーター、映画評論などさまざまな分野で活躍中。近著に「対人関係が一瞬で楽になる心の技術」がある。