「夢をまことに」山本兼一著

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 主人公は、近江の国友村で鉄砲鍛冶を営む国友一貫斎(くにともいっかんさい)。足利将軍の頃から鉄砲鍛冶の家系だったが、徳川の世になって仕事が減り、一貫斎はもちろん村人たちの暮らしも厳しくなっていた。

 その上、役人が自由に鍛冶の仕事を請け負うことを問題にして江戸の鉄砲玉薬奉行に訴えたため、江戸に出向くことに。やましいことのない一貫斎は、この江戸行きをこれからの村を支える技術を学ぶ機会だと考え、空気で玉を飛ばすオランダの風炮を参考に新たに日本製の「気炮」を完成させる。国友村に新たな仕事をもたらした一貫斎は、さらに遠くまで見ることができるテレスコップ、海の中を進む潜水艦、鳥のように飛ぶ飛行機などモノづくりへの果てなき夢に挑戦していく。

「利休にたずねよ」で直木賞を受賞し、昨年2月に逝去した著者が残したモノづくりに魅せられた男の一代奮闘記。さまざまな難題に一つ一つ向き合う主人公の真摯な姿がすがすがしい。(文藝春秋 2200円+税)


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