あの戦争「外務省善玉説」は本当か

公開日: 更新日:

 日ソ戦争について、〈日本政府がソ連の開戦宣言文書を正式に受理したのは、ソ連軍が満ソ国境全面で総攻撃を開始した後の(一九四五年)八月十日、午前十一時十五分から十二時四十分まで行われた、東郷外相・マリク駐日ソ連大使会談においてであった。〉という史実が重要だ。あの戦争において、ソ連との関係では、日本が侵略された側なのである。

 第1次世界大戦後、日本は世界の一等国になったと舞い上がってしまった。その結果、〈軍事大国としての外交を優先し、工業大国への道を軽視してしまった〉ことに佐藤氏は、日本が破滅の道を選んでしまった原因があると考える。評者もこの指摘は正しいと考える。現在の外務省の「安保マフィア」は、集団的自衛権をできるだけ幅広く行使する枠組みを作ろうと腐心している。この連中に外交を委ねておくと、再び日本を破滅に導く危険がある。太平洋戦争における外務官僚が果たした役割を批判的に検討し、あの連中が同じ穴に落ちることを防がなくてはならない。

★★★(選者・佐藤優)
(2015年8月6日脱稿)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる