「大人のADHD」岩波明著
子供の病気と考えられてきたADHD(注意欠如多動性障害)だが、近年そのメカニズムなどの研究が進み、成人してからADHDと診断される人が増えてきた。
かつては脳の器質的な障害であると考えられていたが、現在では脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンとドーパミンの機能障害であるという説が有力。治療にも、神経伝達物質の濃度を高める薬物が用いられている。
とはいえ、まだ不明な点も多く、正式な臨床検査がないため、診断には症状と経過の詳細な情報が必要とされている。とくに役立つのが小学校時代の通知表。ADHDの患者には、担任によるコメントに「文字が乱雑」「計算ミスが目立つ」「じっくり考える習慣をつけて」などの記載が共通する傾向にあるそうだ。(筑摩書房 800円+税)