「’70HARAJUKU」 中村のん著
一方で、歩道では同潤会アパート(現在の表参道ヒルズの場所に立っていた集合住宅)に暮らす子供が三輪車で遊んでいたり、半ズボン姿の少年が神宮前交差点を自転車で通り過ぎたりと、平日の表参道は今の状況からは想像もできぬほど、生活感があり、のんびりとしている。
ザ・ローリングストーンズの初来日公演のチケットを求めて渋谷の売り場に集まった人々(72年)や、ウッドストック(69年)のスピリットを継承する日本初の野外ロックフェスティバル「箱根アフロディーテ」(71年)など、原宿につながる時代の熱を記録した写真も網羅。
キラー通りの名付け親のコシノ・ジュンコや、近くのスタジオでレコーディング中のミュージシャン・高中正義らが写る写真からは、時代を疾走する彼らの勢いがあふれだしてくるようだ。
同じころ、表参道とぶつかる青山通りでは学生たちがジグザグデモを繰り返し、明治公園では集会が開かれていた。70年安保学生デモだ。
幾つもの円が重なり合うように渦巻く激動の時代にあって、その求心力で若者たちを引きつけ、その渦の中からさまざまなものを発信してきた街・原宿。