「ブレイン・ドレイン」関俊介著
犯罪性向を持つ邪悪な人間「欠落者」を選別できるようになった近未来が舞台。欠落者は脱出不可能な人工島に隔離されている。主人公のセイは中学3年のときに受けたテストで欠落者と判定され、それから13年、ずっと人工島で暮らしている。
しかし彼は、自分が正常な人間であることを知っている。つまり欠落者を判定するテストには欠陥があるということだ。だがセイにはどうすることもできない――これが本書の基本設定である。
その人工島に潜り込んだ医学生を捜し出し、生きたまま島から出すことを彼は依頼され、本書が始まっていく。詳しい説明は省くけれど、人の殺意が赤い色となって見える特殊能力をセイは持っている。脳で発生する思考を一瞬早く読み取る能力で、それが「ブレイン・ドレイン」だ。だから、戦うとき相手のナイフがどこを狙うのかが彼にはわかるのだが、後ろから襲ってくる敵の思考を読むことはできない、というのもうまい設定だ。
邪悪でない人間を島に閉じ込める目的は何なのか、潜入した医学生の狙いは何か、という大きな謎を背景に、スリル満点な謎探索行が快調に展開するが、一番の美点は、後半に登場する真に邪悪な人間との対決が鮮やかであることだ。飲んだくれの教授をはじめとして、さまざまな脇役たちの造形もいいが、この邪悪像が屹立している。セイよ、おまえはこの敵を倒すことができるのか、とひたすら応援するのである。(光文社 1600円+税)