「ヒラリー」岸本裕紀子著
アメリカ大統領選の最有力候補、ヒラリー・クリントンとはどんな政治家で、どんな女性なのか。「ヒラリーファン」を自任する著者が、アメリカの報道番組、主要新聞、雑誌、ヒラリーの自著などをひもとき、公平、公正なヒラリー像を描こうと試みている。
ヒラリーはシカゴ生まれ。アメリカのホームドラマに出てくるような典型的な中流家庭で育った。勉強、ボランティア、教会の活動、バイトに精を出す聡明な少女で、クラスのまとめ役だった。
東部の名門女子大に進んだころ、古きよきアメリカは終焉を迎えつつあった。大学改革、ベトナム反戦、キング牧師暗殺……。寄宿舎で夜な夜な議論し、世界に目を開いていく。20代のヒラリーは牛乳瓶底眼鏡で、髪は伸ばしっぱなし。おしゃれには無頓着だった。卒業後、エール大学の法科大学院へ進み、長身でイケメンのビル・クリントンと出会う。ビルのほうが積極的にアプローチして、卒業後に結婚。政治家を志していた彼は故郷アーカンソーへ戻り、若くして州知事になった。ヒラリーは眼鏡をコンタクトレンズに替え、髪を切り、金髪に染めた。
州知事夫人からファーストレディーへ。そして国務長官へ。ヒラリーの政治家への道は、一見、夫主導に見える。しかし、ヒラリーは若いころから女性や子供の人権問題をライフワークと考えていた。母ドロシーは肉親の愛情に恵まれず、14歳のとき住み込みの子守の仕事につき、そこで初めて愛情ある家庭を知った。「母のように、手を差し伸べることを必要としている人たちのために戦いたい」。この思いが政治家ヒラリーの根っこにある。もし、ビルと結婚していなかったら、もっと早く大統領候補になっていたのかも?(PHP研究所 1400円+税)