「最後のブルートレイン」持田昭俊著

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消えゆく寝台列車。在りし日の雄姿を活写

 新幹線の延伸や、旅客機の普及・低価格化で、主要都市と地方を結んでいた寝台特別急行列車は相次いで姿を消していった。本書は、ブルートレインの愛称で親しまれたそんな寝台列車の在りし日の雄姿を収めた写真集である。

 東海道本線が全線電化した1956(昭和31)年、東京と博多を結ぶ特急「あさかぜ」が運行を開始。その2年後、国鉄(日本国有鉄道=現JR)は、従来の客車とは一線を画した豪華な新型車両「20系」を同路線に投入する。

 夜を連想させる深い青色の車体から、この20系客車はいつしか「ブルートレイン」の愛称で呼ばれるようになった。「あさかぜ」で高い評価を得た20系は、国鉄の寝台列車の新しいスタンダードとして、翌年には東京~長崎・佐世保を結ぶ特急「さくら」、そしてさらにその翌年には東京~西鹿児島間運転の特急「はやぶさ」などに増備。東京~九州間が20系化されると、次は東北方面へと投入された。

 著者が高校生だった40年前に初めて手にした一眼レフカメラで撮影した「あさかぜ」をはじめ、この春、北海道新幹線の開通とともに役目を終えた「カシオペア」(上野~札幌)と「トワイライトエクスプレス」(大阪~札幌)まで、これまでに撮影してきた寝台列車の写真を収録。

 長崎行き「さくら」(2005年2月28日撮影)や一面の菜の花に見送られるように走る特急「富士」(東京~大分)(09年3月14日撮影)など、ダイヤ改正とともにその日で役目を終えた最終列車をはじめ、雪をものともせずに進む特急「日本海」(大阪~青森)や、世界初の寝台電車として登場した581・583系の特急「なは」(新大阪~西鹿児島)など。

 記念碑的な一枚から、時には雪山を登るなど天候にもめげずに苦労して撮影した一枚まで、渾身の作品が並ぶ。

 夕日が沈む日本海を一望しながら進む特急「出雲4号」(東京~出雲市)や、青々とした水田の上をすべるように走っているかのような急行「津軽3号」(上野~青森)など、美しい風景の中に溶け込んだ列車の姿はまた格別だ。

 特急「カシオペア」の車内から撮影した青函トンネル最深部の車窓の風景など読者の「鉄心」をくすぐる写真の他、カメラは上野駅のホームで発車時間ぎりぎりまで別れを惜しむ特急「鳥海」(上野~青森)の乗客と見送りの人、急行「銀河」(東京~大阪)の最後尾に陣取って眺望を楽しむ親子など、列車を舞台にした人間ドラマにも向けられる。

 各ブルートレインの動画を収録したDVDも添付され、ファンにはたまらない充実の内容だ。(宝島社 2480円+税)


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