アメリカの汚れた戦争と中東情勢の真実
「CIAの秘密戦争」マーク・マゼッティ著、池田美紀訳
ついに「アメリカ史上最長」になったアフガン戦争はじめ、アメリカの汚れた戦いぶりが際立っている――。
CIAといえばスパイの本拠地、いやそのはずだった。しかし、本書を読むと現状はまったく違うことに気づく。9・11同時多発テロの前、CIAは冷戦の終結によって役割がなくなり、組織も縮小されていた。特にレーガン時代のイラン・コントラ事件でCIAの関与が強く批判されて以来、CIAは露骨な工作活動ができなくなっていたのだ。
ところが、9・11の衝撃を受けてブッシュ政権が始めた対テロ戦争でCIAは急肥大し、ビンラディンらの暗殺計画に奔走した揚げ句、「もはや外国政府の秘密を盗むことに専念する伝統的な諜報機関ではなく、人間狩りに入れ揚げる暗殺マシンのような存在になった」と著者はいう。
虐待で悪名を馳せたグアンタナモの捕虜収容所の一件もCIA流のやり方で予備役兵を使役した結果。また多数の空軍パイロットたちを悩ませるドローン(無人機)攻撃作戦の多くも、CIAの主導のもとで行われる。CIAでは中央と現場の支局の間で意見や認識の食い違いが多いことでも知られるが、対テロ戦争ではそれが増加していることも本書でわかる。著者はピュリツァー賞を受賞した安全保障問題専門のジャーナリスト。(早川書房 2200円+税)