「彼女に関する十二章」中島京子著
50歳をすぎた聖子は、雑文書きの夫が女性論執筆の参考資料として探しだした伊藤整の「女性に関する十二章」を手に取った。「人生の初めに男性に現れる愛情は表現されないで終わるのが常だ」という一文が目に留まった。その日、久世譲という人物から手紙が届いた。それは聖子が小学4年生の夏に、母が預かった友人のカメラマンの息子で、中学生だった久世佑太の死を知らせる手紙だった。聖子は佑太が自分の〈人生の初めに現れた〉初恋の相手だったことを思い出す。
60年前に書かれた本が現実とリンクしてそれを読んだ女性の人生を変えていく、ロマンチックな長編小説。(中央公論新社 1500円+税)