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「沸点」チェ・ギュソク作、加藤直樹訳、クォン・ヨンソク監訳・解説
マスコミも教育機関も軍部独裁政権の下僕と化していた、1980年代の韓国が舞台。主人公のヨンホは少年時代に反共産党教育を受けてきたが、大学入学後、民主化闘争に参加。デモや学生運動を武力で制し、拷問や殺人で言論を封じる政権に、人々の不満が次第に熱を帯びていくさまが生々しく描かれる。特に、ヨンホの母が息子の逮捕を機に、革命に覚醒していく姿は劇的だ。
無知な田舎のオモニは、やがて集会でアジテーションするまで変貌を遂げる。国民の熱意が沸点に達し、大統領直選制をはじめとする民主化に成功したのが、87年6月。このマンガには、今の日本にも通ずる背景がある。
現政権の不穏な動きを懸念する人は、勇気と屈しない心をヨンホの母から学び取れるだろう。(ころから 1700円+税)