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「怨歌劇場」野坂昭如、滝田ゆう著

 戦時中の食糧難、戦後の空虚感。貧しくも悲しくもたくましく生きていく男と女を描いた作家・野坂昭如。「火垂るの墓」「猥歌」など野坂の小説12編を、マンガ家・滝田ゆうが独特の世界観で具現化した、珠玉の短編集。

 野坂が描く男の性根は、生きることにも性欲にもとことん正直。コミカルな中に悲しみや諦観がポツンと点在する。女たちはさらにどこか寂しげだ。それが滝田の手にかかると、一気に匂い立つ叙情詩としての完成度を高める。

 このマンガが教えてくれるのは、死生観。生は、性にも精にも通ずる「図太さとたくましさ」であり、死は案外「身近であっけない」という諦観だ。戦争の悲惨さを刻む一面、人間の営みの愚かさとしたたかさを見せてくれる。18禁にせず、子供にも読ませたい秀作だ。(河出書房新社 1800円+税)


【連載】ザッツエンターテインメント

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