最新面白マンガ特集

公開日: 更新日:

「怨歌劇場」野坂昭如、滝田ゆう著

 戦時中の食糧難、戦後の空虚感。貧しくも悲しくもたくましく生きていく男と女を描いた作家・野坂昭如。「火垂るの墓」「猥歌」など野坂の小説12編を、マンガ家・滝田ゆうが独特の世界観で具現化した、珠玉の短編集。

 野坂が描く男の性根は、生きることにも性欲にもとことん正直。コミカルな中に悲しみや諦観がポツンと点在する。女たちはさらにどこか寂しげだ。それが滝田の手にかかると、一気に匂い立つ叙情詩としての完成度を高める。

 このマンガが教えてくれるのは、死生観。生は、性にも精にも通ずる「図太さとたくましさ」であり、死は案外「身近であっけない」という諦観だ。戦争の悲惨さを刻む一面、人間の営みの愚かさとしたたかさを見せてくれる。18禁にせず、子供にも読ませたい秀作だ。(河出書房新社 1800円+税)


【連載】ザッツエンターテインメント

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  2. 2

    小泉進次郎氏「コメ大臣」就任で露呈…妻・滝川クリステルの致命的な“同性ウケ”の悪さ

  3. 3

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  4. 4

    永野芽郁は映画「かくかくしかじか」に続きNHK大河「豊臣兄弟!」に強行出演へ

  5. 5

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  1. 6

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  2. 7

    関西の無名大学が快進撃! 10年で「定員390人→1400人超」と規模拡大のワケ

  3. 8

    相撲は横綱だけにあらず…次期大関はアラサー三役陣「霧・栄・若」か、若手有望株「青・桜」か?

  4. 9

    「進次郎構文」コメ担当大臣就任で早くも炸裂…農水省職員「君は改革派? 保守派?」と聞かれ困惑

  5. 10

    “虫の王国”夢洲の生態系を大阪万博が破壊した…蚊に似たユスリカ大量発生の理由