ある日突然、妻へのDV容疑で逮捕され…

公開日: 更新日:

「冲方丁のこち留こちら渋谷警察署留置場」冲方丁著(集英社インターナショナル 1200円+税)

 早稲田大学在学中に小説家デビュー、「天地明察」が吉川英治文学新人賞、本屋大賞を受賞、ベストセラーに。アニメ・漫画原作・ゲーム・小説と活躍する場が広がり、冲方丁は映画俳優のようなルックスもあいまって近年もっとも人気のある作家である。

 冲方丁が吉川英治文学新人賞を受賞したとき、作家・伊集院静の祝賀スピーチが印象的だった。

「授賞式のとき、家族みたいな席にきれいな女がいるなあと思ったが、いま聞いたら、女房だという。美人をもらうということは、将来、非常に苦労する。わたしも女優を嫁にもらって、ずいぶん苦労した(場内笑)」(「本の雑誌」2010年6月号)。

 だが好事魔多し。

 2015年8月24日、ベストセラー作家は突然逮捕されてしまう。当時の報道では、“妻へのDV容疑で作家の冲方丁容疑者逮捕 渋谷署”というショッキングなものだった。

 本書は冲方丁自身による逮捕・留置場体験をつづった報告書である。

〈3人組の刑事が私の前に現れたのは、まさに突然のことでした〉

 留置場では、官製のトレーナーが容疑者に貸与される。ねずみ色のトレーナーにはマジックで「留QLO」(トメクロ)なる文字が書かれている。ユニクロのシャレなのだろうが、警察もくだけてきたというか。

 留置場では「天地明察」の作者だということがわかったその日から「先生」と呼ばれるようになる。

 9日間にわたって渋谷警察署の留置場に閉じ込められた後に釈放、不起訴処分が下される。DVはなかったということなのだが、本書には「元妻」という記述もあり、すでに離婚が成立していることがわかる。

 本書のサブタイトルからもわかるように、自身の体験をマイナスにとらえず、創作の糧にしているところはさすが作家である。そして夫婦という関係の難しさもひしひし伝わる書でもあるのだ。

【連載】裏街・色街「アウトロー読本」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる