「源氏姉妹」酒井順子氏

公開日: 更新日:

 著者は光源氏を性依存症と評するが、その博愛精神は認めている。彼の相手は、若い娘や美女ばかりではない。誰からも忘れ去られているような女性にも、「僕がしてあげなくては誰がする」とばかりにヤリまくっているのだ。

「美しさも盛りの源氏18、19歳の頃には、物語における唯一無二の“エロババア”として異彩を放つ源典侍と関係を持っています。そのとき彼女は57、58歳。AVにおける熟女ものでもない限り、そうは見ない関係です。また、鼻が象並みに長く異様に座高が高いというブスキャラの末摘花には、“捨て置くのは可哀想”と着物の世話までも焼くのです。高貴な人・光源氏は、福祉の精神で醜女や年配者にも“性と精”を分配した。地位と名誉と金を手に入れた現代の男性たちにも、ぜひ見習って欲しいですね(笑い)」

 本作では、“姉妹”だけでなく“兄弟”の関係も描かれている。つまり源氏姉妹たちも、源氏とだけ関係していたわけではないのだ。この後やってくる武士の時代とは違い、男女ともに性を楽しんでいた平安時代は、1000年の時を超えた現代とも共通しているようだ。ぜひ、源氏物語の原文も読んでみたくなる。(新潮社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」