「機密奪還」(上・下) マーク・グリーニー著 田村源二訳

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 トム・クランシーの「ジャック・ライアン・シリーズ」は、クランシーの死後、マーク・グリーニーが書き継いでいる。これはその最新作だ。

 さまざまな国際謀略と戦う対テロ情報組織「ザ・キャンパス」の活躍を描く「ジャック・ライアン・シリーズ」をこれまで1作も読んでない方は、突然、この「機密奪還」を読むのはちょっと、と思われるかもしれない――が、大丈夫。なぜならこの「機密奪還」はシリーズ外伝であるからだ。工作員ドミニク・カルーソーの単独冒険行を描く本書は、これまでの作品と切り離して読めるのである。

 格闘術の師匠を殺されたドミニク・カルーソーが、その原因をつくった男(機密情報を漏らした国家安全保障会議職員)を、パナマからスイス、アルプスを越えてリビアまで、とことん追いかける話である。シリーズ本編のほうは、国を守るためという正義のニオイがどこかにあるが、この外伝は個人的な復讐のかおりが強いのが特徴で、モチーフはサバイバーズ・ギルト(生き残った者が死んだ者に抱く罪悪感)だ。

 訳者あとがきで指摘されているように、スノーデン事件やウィキリークス事件を彷彿させる展開もあり、その背景に、イスラム国、そしてイランやロシアの特殊部隊の暗躍がある。それらの敵と戦いながら標的を追い掛けるドミニク・カルーソーのマンハントを、たっぷりと堪能されたい。(新潮社 上・790円+税 下・710円+税)

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