書店の棚でひときわ目立つ「小池都政」の賛否両論。小池派・反小池派の争いの様相を検証する。
「豊洲新市場・オリンピック村開発の『不都合な真実』」岩見良太郎、遠藤哲人著
都市計画につきものの区画整理や再開発は、大都会への人口密集度が高く、また地権者の権利が強い日本では大問題になる。本書は区画整理や再開発に対する地域住人の立場からの関与を全国的に進めようと活動するNPO法人のメンバー2人による東京都政論だ。
現今の都政の2大難問といえば、やはり築地市場の豊洲移転問題と、2020年東京オリンピック開催問題。豊洲新市場問題について著者がまず問題視するのは、東京都と東京ガスが明らかに談合し、東京ガスに対して不当な利得を与える施策をおこなったこと。
特に汚染地と普通地を入れ替えるに当たって都は区画整理の手法を駆使し、汚染の原因を作った東京ガスが負うべき負担原則をあいまいにしたという。
東京五輪についての最大の問題は、オリンピックを当てこんで公有地の投げ込みをふくむ大規模な都市整備・再開発計画が強引に進められていること。
中央区晴海で進む「晴海スマートシティ」という高層マンション群の建設は市場価格の10分の1程度の超格安価格でディベロッパー13社に公有地を売り渡し、暴利を保証している。薄手の本書だが、中身は濃い都政批判の一冊。(自治体研究社 1204円+税)
「都議会、地方議会伏魔殿を斬る!」栗原直樹著
「東京都は伏魔殿」と語ったのは石原元知事。その物言いに「まるで他人事のようだ」と批判が上がったが、長年衆院議員秘書として政界を見てきた本書の著者は、都議会こそ伏魔殿と言い切る。 冒頭くわしく描かれる昨年の千代田区長選の模様は、いかにも政治のプロらしい情報と解説にあふれている。ブームを巻き起こした小池都政についても、来る都議選では「小池チルドレン」の嵐といわれているが、「店子がいくら替わっても、自民党という老舗は替わらない」と釘を刺す。
その一方、「小池の次なる敵」は菅官房長官であるとして、双方を見比べてお互いの駆け引きを公明党の動きと合わせて分析。どちらを向いても魔物だらけが実態のようだ。(青志社 1400円+税)
「誰が『都政』を殺したか?」上杉隆著
先の都知事選では、みずから出馬して4位につけたフリージャーナリストの著者。本書は巻頭に小池都知事との対談を掲載し、衆議院議員から都知事へ立候補した決断を絶賛。「わたしの母もそうですけど、息子が同じ都知事選に出てるのに小池さんに入れようとした」と笑いをとる。その後も過去のインタビューを再掲し、「敵(対立候補)の言葉にさえ耳を傾ける」ことをいとわない「もっとも熱心な意見交換の相手」とたたえる。“小池派”都政論の最右翼といったところだろうか。(SB Creative 1000円+税)