「半分生きて、半分死んでいる」養老孟司著
ある日、学生から「もう死んだと思ってました」と話しかけられたという著者。本人はまだ元気なつもりでも、実情ではすでに死亡済み――そう思えば気楽なもので先行き世界がどうなろうと知ったことではないという氏が、気ままに世相を斬る時評エッセー。
ある本で、預金に利息がつかないのは実体経済に発展の余地がなくなったからだと知り大いに納得。要するに経済自体が煮詰まったからだ。見渡せば、首相が憲法を改正したがっているのも安全保障をめぐる議論が煮詰まったからで、原発問題も煮詰まったまま議論が動かない。人口減少も高齢化も、世の中が煮詰まったことが分かっているからヒトが減るのだろうと推測する。
皮肉とユーモアを利かせながら現代社会を見つめる。
(PHP研究所 860円+税)