飲む前に読む!? 最新・酒の本特集
「ジンの歴史」レスリー・ジェイコブズ・ソルモンソン著 井上廣美訳
旬の食材が続々と食卓に並ぶ食欲の秋が到来。おいしい酒肴があれば、酒も一段と進むというもの。そこで、今週はお酒をテーマにした本を紹介する。くれぐれも飲み過ぎにはご注意を。
◇
ドライマティーニやジントニックなど、カクテルのベースとして欠かせないジン。バーでちょっと背伸びをして飲んでいるこの酒が、18世紀のロンドンでは「ジン・クレイズ(狂気のジン時代)」と呼ばれるほど熱狂的な人気を得ていたというのをご存じだろうか。
当時、密造酒レベルの粗悪なジンが出回り、ロンドンの街中は酔っぱらいだらけになり、その状況は「近代が初めて経験した薬物への恐怖」を抱くほどだったという。本書は、そんなジンの歴史をひもときながら、ジンに秘められた知られざる物語を明かしていく酒文化史本。
そもそもジンは、13世紀、後にオランダとベルギーになるフランドル地方で生まれた。古くから薬効を知られていたジュニパー(西洋ネズ)・ベリーを香りづけに使った酒「イエネーフェル」を英語化したのが「ジュネヴァ」であり、それが「ジン」と呼ばれるようになったそうだ。
しかし、ジュネヴァと現在のジンは、兄弟よりもいとこのような関係で、ジュネヴァはジンよりも強く酔いがくる、どちらかというと上質なウイスキーのような酒だそうだ。
この上質な酒をまねて造られた安酒が、ロンドンに「ジン・クレイズ」を招いたのだ。その安酒が現代のジンになるまでの過程をエピソード豊かに紹介。さらに英国海軍の壊血病予防がはじまりだったというギムレットやジントニックなどのルーツや、世界各地で造られているクラフトジンなどの最新の動向まで。つい誰かに話したくなる話題が満載。
各種カクテルのレシピも添えられているので、ジンを味わいながらの読書などいかがだろう。
(原書房 2200円+税)
「ウイスキーバイブル」デイヴ・ブルーム著 鈴木隆行監修
ブーム再来のウイスキーの楽しみ方を教えてくれる「マニュアル」本。
歴史や製造法などの基礎知識を概説後、多くのページが割かれるのが、著者が102種類ものウイスキーを6通りの方法で試飲したテイスティングノートだ。
ストレートでの味わいはもちろん、ソーダ水、ジンジャーエール、コーラ、ココナツウオーター、そして緑茶とミキシングして試飲した結果を5段階のスコアで評価する(緑茶は、中国茶や台湾茶で甘味が加わったもの。おすすめは台湾の凍頂烏龍茶や高品質の白茶だそうだ)。
「マッカラン18年」のようにどの割り材とも相性が悪くストレートで飲むのがイチバンという酒は数少なく、「カナディアンクラブ」はソーダ水はおすすめできないが緑茶で割ると最高のハーモニーを奏でるのだとか。
読めば自分好みの組み合わせを試したくなる。
(日本文芸社 2000円+税)
「ビジネスの武器としての『ワイン』入門」井上雅夫著
欧米のビジネスエリートにとって、ワインの知識やテイスティング能力は、ビジネスを制するための必須ツール。企業もワインを学ぶ社内研修を実施しているという。なぜならワインは目の前の一本から無限に広がる「話題の宝庫」だからだ。さらに、かつて仏大統領がうま年生まれの日本の首相の歓迎晩さん会で「白い馬」という名のワインを出したように、おもてなしの心を伝えるのにも最適なアイテムとなる。そんなビジネスツールとしての視点からワインをとらえたガイドブック。
これだけは知っておきたい産地やブドウの品種、ラベルの読み方などの基本から、当たり年のワインが一概においしいと言い切れない理由や、1本10億円するものまである価格の謎など。豊富な話題で初心者ビジネスマンをワイン通へと導いてくれる。
(日本実業出版社 1500円+税)
「知る・選ぶ・楽しむシードルガイド」藤井達郎監修
海外ではビールやワインに並ぶほど人気のシードルは、リンゴ果汁を発酵させて造られる醸造酒。日本で近年、生産者や種類が増えて注目が集まっているという。
そんなシードルの魅力、楽しみ方を教えてくれるガイドブック。
世界中に約1000種類もあるシードルは、ビールのようにフレーバーを足したり、シャンパンのように瓶内2次発酵後に澱を減らす方法がとられたりと製法も千差万別。ゆえにその味わいは、バラエティー豊かで、ビールのように(プリン体はビールの40分の1)喉を潤したり、ワインのように香りを楽しむなど、さまざまな味わい方ができる。
世界十数カ国のシードル200本以上を詳細に解説するとともに、選び方のコツや製法、そしてぴったりの料理やおつまみのレシピまで。飲まず嫌いだった人も一読を。
(池田書店 1700円+税)