「いまいちばん美しい 日本の絶景」MdN編集部編

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 スマホを片手に世界中の人がカメラマンと化した現代。ネット上にさまざまな写真が日々蓄積され、「インスタ映え」する写真に、いささか食傷気味の世の中だが、本書を手にしたら、絶景写真というジャンルの奥深さに改めて気づかされることであろう。

 30人以上のカメラマンによる166点もの絶景写真は、その一枚一枚が絵画のように隅々まで計算し尽くして撮影されており、見るものに新鮮な感動をもたらす。

 世界に絶景と呼ばれる景色は数多あるが、そこにカメラを向けてシャッターを押しただけでは、絶景写真とはならない。

 例えば、福岡県篠栗町にある「九大の森」で撮影された一枚は、池の中からラクウショウの大木が何本もそびえ、その光景自体がすでに日本離れしている。さらに画面には、樹木の幹に優しく降り注ぐ木漏れ日や、鏡面のような水面に映り込んだ空の青、そして見えないはずの空気の存在までが感じられ、すべてが融合すると、どこからともなく音楽まで聞こえてきそうな一枚となっている。

 富山県砺波市の庄川峡を撮影した一枚は、雪景色の美しさもさることながら、遊覧船が作り出す川面の航跡が作品の出来栄えを特別なものにしている。

 さらに、秋田県由利本荘市の「桃野菜の花畑」や和歌山県有田川町の「あらぎ島」の棚田の上の夜空に広がる天の川など。

 景色を引き立たせる構図にはじまり、光の彩、雲の配置、花の咲き具合や紅葉や新緑の絶妙な色加減まで、おそらくカメラマンたちは、その風景に絶好の時間や季節が到来し、納得の一枚を撮影するまで何度も同じ場所に足を運び、寒さや暑さに耐えながらじっとその一瞬を待ち続けたことだろう。

 奈良県御所市の見渡す限り曼珠沙華の花畑や、山形県遊佐町のどこかの海岸の夕景、木々の間からスポットライトのように斜光が降り注ぐ熊本県阿蘇郡のどこかの川の風景など、カメラマンだけが知る秘密のスポットも「某所」として登場するが、絶景とは人里離れた遠くに行かなければ見られないものでもない。

 中には、東京駅が被写体となった作品まであるのだ。雨上がりの夜、駅前の大きな水たまりに、逆さ富士ならぬライトアップされた「逆さ東京駅」が写り込んだその一枚など、人や車が行き交う場所柄を考えたら、その水面の静寂さは奇跡ともいえる。

 また低く垂れこめた雲の絨毯の向こうにスカイツリーをはじめとする東京の夜景が輝く茨城県つくば市の筑波山山頂から撮影した光景や、徳島市の吉野川の冬の風物詩といわれる夜のシラスウナギ漁など、人間の営みと自然が作り出す幻想的な風景から、新潟県村上市の笹川流れや愛知県岡崎市のくらがり渓谷など、自然の神秘に圧倒される作品まで、撮影スポットは47都道府県すべてに及ぶ。

 日本の風景の美しさを改めて教えてくれる写真集であり、絶景写真のお手本としてもおすすめ。

 (エムディエヌコーポレーション 1900円+税)

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