外国人が教えるニッポンの真相本特集
「ゲラーさん、ニッポンに物申す」ロバート・ゲラー著
日本の魅力とは?逆に弱点や短所は? 日本をこよなく愛する外国人や日本在住数十年の外国人、そして遠慮なく辛辣に批評する謎の外国人など、外国人の視点で見たニッポン論を紹介する。新発見だけでなく、反省すべき点も多そうだ……。
地震学専門の科学者で、東大名誉教授でもある著者が、今の日本に潜む問題を鋭く論じる。1章では「地震予知」という幻想がまかり通る危うさについて言及。地震予知は不可能であるにもかかわらず、研究費はつぎ込まれ、御用地震学者がばっこ。政府もメディアも科学的根拠のないまま、危険性だけをあおると指摘している。
2章では、研究不正の闇に斬りこむ。研究論文の捏造や改ざんが頻発した背景には、モラルと知性の欠如、大学教育自体にも問題があると示唆する。
その他にも、健康に有害な喫煙や使えない英語教育で世界から取り残される日本を一刀両断。いずれも根底にあるのは官僚や政府の消極姿勢であり、問題解決能力の低さ。それに追従するテレビ(特にNHK)や大手新聞などのメディアの罪も重いと喝破する。 (東京堂出版 1600円+税)
「外国人が見た日本」内田宗治著
旅関連の本を数多く作ってきた著者が、観光国としての歴史を緻密にたどる。外国人の視点による観光の発展の軌跡をまとめている点が珍しい。
明治時代、イギリス人が制作した旅行案内書では神仏宗教分化の背景や登山の魅力にも触れていた。また外国人のおかげで発展を遂げたのが、日光と箱根だ。
ところが第1次世界大戦後は、外国人が見たいものと政府が見せたいものに隔たりが生じたと分析。アメリカ人が著した本と内閣鉄道院が作成した本では、掲載地も異なる。吉原遊郭は政府が見せたがらなかった場所のひとつだそう。
現代でも、日本人が考えもしないスポットを外国人は求める傾向がある。例えば、新幹線の車内清掃の場面は「7分間の奇跡」と称賛されている。東京五輪も含め、観光先進国を目指す日本に、改めて問いかける一冊。 (中央公論新社 880円+税)
「黒船時代の技法で撮る失われゆく日本」エバレット・ケネディ・ブラウン著、撮影
日本在住30年のアメリカ人フォトジャーナリストによる、私的日本論。ガラスをネガにして撮影する「湿板光画」という技法で、独特の味わいがある作品を制作。被写体になるのは、日本の伝統的な祭りの扮装や古典芸能の衣装、季節感とわびさびを感じさせる風景や畳敷きの和風建築など。いずれも古き良き日本のひとコマだ。イ草や土、風の匂いが漂ってくるような湿度の高い写真が多い。
写真とともにつづる文章では、現代の日本を憂う。感覚よりも利益や合理性を追求した結果、伝統文化の衰退が始まったなど辛辣でもある。最大の原因は明治時代のスローガン「和魂洋才」。欧米の最先端を急激に取り入れた結果、精神性と感性を失ったという。
「阿吽の呼吸」「山伏」「囲炉裏端」に見る日本人独特の感性を再び取り戻したほうがいいと提言する。
(小学館 1500円+税)
「秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本」J・ウォーリー・ヒギンズ著
昭和30年代の日本ではカラーフィルムが入手困難で、写真のほとんどが白黒である。著者は米軍に所属していたため、貴重なカラーフィルムを使って当時の日本を撮影。1958年の来日以来、日本の鉄道と町並みに魅了され、カラー写真を撮り続けた。382枚の秘蔵写真とともに、当時の日本人の暮らしぶりを丁寧に記録したのが本書だ。
著者は現在91歳。もともと電車オタクで、新幹線よりも在来線や路面電車を好む、いわゆる乗り鉄で撮り鉄だ。彼の写真には、路面電車や蒸気機関車、駅舎の懐かしい姿が鮮明に残されている。
新宿・渋谷・六本木は驚くほどのどかで牧歌的。東京だけでなく、北海道から沖縄まで巡り、町の空気と人の営みを切り取っている。元気に遊ぶ子供の姿には特に思い入れも強い。温かいまなざしが伝わってくる。
(光文社 1500円+税)
「外国人記者が見た平成日本」ヤン・デンマン著
「週刊新潮」で長期連載されてきたコラム「東京情報」が2018年に終了。最新の5年分からえりすぐったのが本書だ。
著者は、通信社の外国人特派員という設定。著者と外国人記者仲間、歴史オタクの部下や東大文学部のアルバイトなども登場し、社会現象や風潮などを軽妙な会話で論じる。その筆致はユーモラスで辛辣、筆禍寸前だ。
「高校野球に熱中するのは朝日新聞拡張員かスポーツを知らない薄らバカ。メディアは美談探しで捏造し、大人の事情を最優先。高校野球は真夏の児童虐待だ」「事実より伝説を好む日本では歴史上の偉人に学びたがる。坂本龍馬も西郷隆盛の使い走りの1人に過ぎず。松井一郎も橋下徹も安倍晋三の使い走り」など。日本の政治家、メディア、そして流されやすい国民性を揶揄する毒舌が清冽。
(KKベストセラーズ 1700円+税)