「荒仏師 運慶」 梓澤要著
奈良仏師・康慶の嫡男運慶は、母親に毛嫌いされるほど醜い子供だった。だが、幼いころから工房に出入りし、ノミを操り、その才を認められた運慶には、母親の仕打ちも気にならない。
10歳のとき、山寺で阿弥陀三尊に対面した運慶は度肝を抜かれる。父の兄弟子が彫ったという仏像の目には見たことがない玉眼がはめられていた。圧倒される運慶に、父は仏様をそのまま継承すればよい京仏師と違い、奈良仏師は今までにない斬新なものを打ち出さねば生き残っていけぬと諭す。
10余年後、初めて1人で大日如来像を彫ることを任された運慶は、自分にしかできないものを造ろうと模索する一方で、評判の今様の名手・延寿に恋をする。
歴史にその名を残す大仏師の劇的な生涯を描く本格歴史小説。
(新潮社 710円+税)