「不敗のドキュメンタリー」土本典昭著

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「水俣―患者さんとその世界―」など多くの記録映画を世に送り出した映像作家のエッセー集。

 1970年発表の「水俣ノート」と題された一文では、撮影のため水俣病多発地帯の部落に暮らした日々がつづられる。氏はその5年前にテレビのドキュメンタリー番組で水俣を取材。今回は、かつて「迫り得なかった一つの課題へのもう一たびの試みである」のだが、そのきっかけとなったのが患者の松永久美子さんだった。口も手も動かせず無反応の彼女にカメラを向けた時、「なぜ? 何のために? どの地点に立って撮っているのか?」という問いを彼女自身から迫られている感覚に襲われたからだ。

 そのほか、「映画と現実とのかかわりについて」など、自らの仕事と思索の一端を明かしながら語られる映画論。

(岩波書店 1320円+税)

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