「R.S.ヴィラセニョール」乙川優三郎著
フィリピンと日本の血を引く駆け出しの染色家のレイは、老舗呉服商との取引にこぎ着ける。そんなある日、父のリオががんで入院。手術を終え、退院するやリオは、フィリピンへ里帰りする。リオにとって弟妹はかけがえのない存在で、これまでも母の君枝を残し、単身で何度も里帰りをしていた。
工芸展で作品が入賞し、レイが染色家として着実に人生を進める中、リオのがんが再発。再び手術を受け小康状態になったリオがまた里帰りをすると言い出した。
心配したレイの知らせで、叔父のフェルが来日。レイはフェルから、マルコス時代に青春を送った父の過酷な過去を教えられる。
メスティソ(混血)として生きてきたレイの芸術家としての葛藤と、家族の物語を描く長編。
(新潮社 550円+税)