「地に這うものの記録」田中慎弥著
ポールは駅前1号ビルにすみついているクマネズミ。パパに言葉を教えてもらったポールは、人間と対等に話せる日が来ることを待っていた。
ある日、初めてビルから出て、駅前で市民に声をかけている市会議員の浦田実来子さんに「助けて下さい、猫に追われてるんです」と訴えた。
かつて賑わっていた1号ビルは今は閑散としていて、市議会の与党は取り壊して新ビルを建てようとしているが、野党は公園にしようと計画。ビルを再建してほしいポールは、人間と同じ市会議員の権利が欲しいと考えた。浦田さんは党の懇談会でポールのお披露目をすることにした。
しゃべるネズミが巻き起こす騒動を描く、現代の寓話(ぐうわ)。
(文藝春秋 2250円+税)