「就業規則に書いてあります!」桑野一弘著

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 就業規則とは、会社や従業員が守るべきルールを定めたものであり、10人以上の社員を擁する事業者は就業規則を作成し、行政官庁に届け出ることが決められている。ブラック企業のひとつの指標に就業規則のないこと、あっても不整備であることが挙げられている。

【あらすじ】平河東子は大手建設会社の人事部で労務管理の仕事をしていたが、会社の不祥事によって入社2年で退社を余儀なくされた。そんな東子に救いの手を差し伸べてくれたのが叔父で、叔父が経営するアニメ制作会社8プランニングで労務管理の仕事をしてほしいという。医者一族のお堅い家庭に育った東子はアニメを見たことがなかったが、中途半端に終わった労務管理の仕事に再挑戦できると喜ぶ。

 東子は早速、制作現場の責任者である演出担当の堂島に挨拶し、ついでに就業規則がどこにあるか聞いてみた。すると「そんなものはない」と一蹴される。どんなハードなスケジュールでも堂島の手にかかれば納期は破られることはない。彼の鶴の一声で徹夜が2~3日続くのはざらという、人呼んで「アニメの鬼」。このブラック企業スレスレのムチャな働き方をなんとか改善しようと奔走する東子だが、自分たちは労働者ではなく、アニメが好きでやっているんだという堂島とは平行線をたどるばかり。

 そんな折、発注先の法外な依頼でさすがの堂島も倒れてしまう。常識外れの相手先の横暴に怒った東子は相手先に乗り込んでいくのだが……。

【読みどころ】平均年収110万円、1カ月の平均作業時間が350時間を超える人も多いというアニメ制作現場の過酷な実態を描きつつも、アニメ作りに情熱を傾けるアニメーターたちの情熱も伝わってくる。 <石>

(KADOKAWA 630円+税)

【連載】文庫で読む傑作お仕事小説

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