「車窓の風に吹かれて」『旅と鉄道』編集部編
作家の森見登美彦は「旅と鉄道」の取材で、姫路から姫新線、芸備線、三江線、山陰本線を単行線でたどり、益田に行くことになった。芸備線は地元の高校生でいっぱいだったが、「野馳」という駅でみんな降りてしまい、がらがらに。19時35分に備後落合駅に着いたときは森見と担当編集者の矢玉だけになっていた。
ホームの向かい側にぽつんと待っていた三次行きの列車に乗り移る。「もし我々が乗ってなかったら」と森見が言うと、矢玉は「誰もいない列車が来て、ホームの反対側から、誰もいない列車が出発するだけでしょう」と答える。「それは美しいなあ」(「単行列車で陰陽の脊梁をゆく」)
他に、梯久美子、島尾伸三ら13人が、懐かしの鉄道の旅をつづる。
(天夢人 1760円)