「大名左遷」岡崎守恭著
改易(=取り潰し)と転封(=国替え)は、大名を統制する最強の手段。転封には、石高を削る減知の一方で、石高が膨らむ加増もあるから必ずしも左遷だけではない。しかし、先祖伝来の土地から切り離し、未知の土地に行かせるので統制の手段となったという。
こうした手法を最初に用いた信長は、武田氏の滅亡後、北伊勢を領有していた滝川一益を上州に国替えするなど、方面軍ともいうべき軍団を指揮する重臣を遠隔地に国替えし、一門や側近を近隣に配置した。秀吉も、家康を関東に移すなど、頻繁に国替えを実施して政権の安定のための体制を整えた。関ケ原の戦いに圧勝した家康もまた改易、転封を思いのままに進めた。
改易と転封によって生じた諸藩の人間ドラマを紹介する歴史読み物。
(文藝春秋 968円)