「町中華の丸かじり」東海林さだお著

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 ラーメンだけでなく、ヘタをするとオムライスやカツ丼などもある昔ながらのラーメン屋。最近では「町中華」と呼ばれている。夫婦だけでやっていることが多く、60歳がらみの店主がやる気のなさそうな声で「ラッシャイ」と言う。ビールは生ではなく中ビンで500円。

 ある日、町中華に行ったら、店主は若く、「ラッシャーイ」の声も明るい。ほかの客が「タンメン、硬めで」と注文したら、女性が店主に「タンメン、硬めでお願いします」と言い、店主が「タンメン、硬めですね」と復唱した。2人は夫婦ではなかった。ビールも中ビンではなく大ビンで500円だった。人生は意外なことに出くわすものだ。

「週刊朝日」連載の人気エッセーの単行本化。

(朝日新聞出版 1650円)

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