「わたしのペンは鳥の翼」 アフガニスタンの女性作家たち著 古屋美登里訳
2021年8月、タリバンが首都カブールを制圧、国外へ逃れようとする人々で混乱を来すカブール国際空港の模様は記憶に新しい。タリバン政権による女性の就労や教育の権利制限は問題視されているが、それ以前からアフガンの女性たちは極めて保守的な社会において暮らしを制限されており、そうした女性たちの声を伝えてくれるのが本書だ。
本書の原著は、2019年、20年にダリー語とパシュトー語で書く女性作家の短編を公募、そこから18人23編の作品を選び英訳したもの。英訳、国外での出版ということがアフガンの女性たちが置かれている状況を示している。
少し前の日本がそうであったように、アフガンでも後継ぎの男子を産むことが女性には課されている。「八番目の娘」は、8人続けて女の子を産み、絶望のあまり煮立った牛乳を頭からかぶってしまう女性の話。「防壁の痕跡」にも、息子を産まなかったので2人目の妻をめとったんだ、と語る父親が登場する。
「犬は悪くない」では、紛争で夫を失った女性が慣習だからと夫の兄に結婚を強要され、抵抗する姿が描かれている。ロケット弾に攻撃される放送局での恐怖を描いた「遅番」や、実際に起きた結婚式場での自爆テロを題材にした「世界一美しい唇」は、常に死と隣り合わせにいる人々の思いが伝えられる。