「木挽町のあだ討ち」永井紗耶子著

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 雪の夜、森田座の裏通りにたたずむ娘に男が声を掛け、腕を引いた。

 娘が振り袖を脱ぎ捨てると、そこに現れたのは前髪の美少年。「我こそは伊納清左衛門が一子、菊之助」と名乗ると、男に斬りつけ、見事、父の仇(かたき)を討ち取った。と、世に言う「木挽町の仇討ち」を口三味線で語ったのは、森田座の木戸芸者。芝居小屋の前で入るのをためらっている客を誘い込むのが仕事だ。

 実は仇討ちを成し遂げた菊之助は、木戸芸者に頼んで芝居小屋で仕事をしながら、父の仇、博徒の作兵衛をおびき寄せようとしたのだ。だが、この事件には秘められた真相があった。

 さまざまな人物の話から真相が浮かび上がるミステリー仕立ての時代小説。

(新潮社 1870円)

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