「満洲 コンフィデンシャル」新美健著
1991年末、春雄が義父から引き継いだ映画館を閉じる日、ドアの前に古いフィルム缶が置かれていた。コレクターからの寄贈かと思ったが、一緒に入っていたスナップ写真に春雄の記憶は、満洲へと引き戻される。
昭和15年、海軍の士官候補生だった春雄は、ある事情から軍艦に乗ることができなくなり、満洲鉄道本社で働くために大連に渡る。
初日、調査部への配属を言い渡された春雄は、新京の満洲映画協会にフィルムを届けるよう命じられ、そのまま新京にとどまり、満映理事の甘粕正彦の不正か弱みをつかんでくるよう指示される。密命の依頼主は関東軍だという。間諜など性分に合わない春雄だが、物見遊山気分で新京に向かう。
満洲を舞台に繰り広げられる冒険スパイ活劇。
(徳間書店 902円)