「花だいこん」山本一力著
「花だいこん」山本一力著
一膳飯屋「だいこん」をやっていたつばきは、店を人に譲り、大店の隠居が住んでいた家を借りて、大工の父安治と母みのぶとの3人暮らしを始めた。初詣の帰りに浅草の仲見世に行ったつばきは、不景気で寂れている様子に心を痛める。
葛根湯を買いに仲町に向かうと、薬種問屋蓬莱屋では、4代目が就任して1年たった祝いに新しい看板を作ることになったと触書を掲げていた。看板の思案を募集していて、採用されれば謝礼は金3両。
それを知った安治の目が光る。不況のため新築普請が減って、このところ修繕仕事ばかりだったのだ。初詣で賽銭を奮発した甲斐があった。安治は看板として6メートルの巨大提灯を店先に吊るそうと考える。
江戸の粋と人情を描く時代小説。 (光文社 1980円)