「完黙の女」前川裕著
「完黙の女」前川裕著
1984年、福岡市天神の医師、篠山重治の家に電話があり、小学4年生の照幸が出た。照幸は「タナカさんのお母さんに貸していた物を返してもらうから、出かけてくる」と言って外出した。2歳上の兄が追いかけたが、見失い、照幸はそのまま戻ってこなかった。
照幸はアパート三幸荘の2階の部屋のドアが半開きになっていたので、住人の三藤響子に、「タナカさんの家を知りませんか? 階段を上がったところが、タナカさんの家だと聞いたのですが──」と尋ね、響子が知っていた田中という家を教えると立ち去ったという。
3年後、響子が結婚した花村喜美夫の義兄、小崎欣弥の家が火事になり、焼けずにすんだ納屋でポリ袋に入った子どもの骨が見つかった。
実在の未解決事件をもとにしたミステリー。
(新潮社 2310円)